ホーム > 道化師(クラウン)流サービスの力

道化師(クラウン)流サービスの力

空気を読み、笑顔をつくるおもてなしテクニック

目次

第1章 クラウン流のもてなし

第2章 A級サービスよりB級サービスのすすめ

第3章 知識と技術があってこそ「サービス力」が活きる

第4章 空気を変えるクラウンの技術とは

第5章 クラウンが大切にする6つの基本テクニック

第6章 クラウン流サービス力強化のためのポイント

第7章 「いいサービス」と「笑い」はいつもセット

このページのトップへ

内容説明

●はじめに

僕はプロの道化師(以下、クラウン)で、プレジャー企画という会社の代表でもあります。また、ホスピタルクラウンとして病院で闘病中の子どもたちに笑いを届ける活動も行なっています。プレジャー企画にはクラウンのほか、プロの似顔絵師や、題字やPOPの仕事を請け負う描き文字師など約80人のアーティストが所属し、遊園地やアミューズメントパーク、サーカス、小中学校などさまざまな場所でショーを行なっています。そのプレジャー企画も今年で10年目を迎えました。ますますメンバー全員が乗りに乗り、毎日、愉快にわきあいあいと活動しています。

~中略~

レストランやホテル、小売業などは、おもてなし業だと言われています。ここで働く人たちは、できる限りのサービスをしようと手を尽くします。たとえば、レストランで食事をしたあとやホテルのフロントで、「本日は楽しんでいただけましたか」という言葉をかけられることがあります。その心遣いはとても嬉しいものです。

でも、心のどこかで何かが違う、という印象を覚えることがあります。それはサービスする側が用意したメニューに関して、サービスを受ける側がどれくらい満足しているのかを一方的に問われているように感じられるためです。立場が違うとはいえ、提供する側と受ける側が共感しながらつくり出していくのがサービス?このような意識であれば、「本日はお越しいただき、ありがとうございます。私どもも楽しみました」と、自然に声をかけたくなるんじゃないかなと思うのです。

~中略~

本書には、さまざまな経験から身につけたすべてのサービスパーソンに必要な考え方をちりばめました。クラウンの活動をしてきた中で得た「サービスを楽しむ」「サービスを共有する」ために必要な考え方、すなわち「クラウンマインド」と、そのためのテクニックとして「時間差攻撃サービス」「B級サービス」「引きのサービス」などもご紹介しています。「えっ! そんな考え方がサービスなの?」と今までの常識をくつがえす考え方もあるでしょう。もしかしたら、この本を手にしてくださったあなたと意見が分かれる部分があるかもしれません。

僕には、とびっきりなことや特別なことををするばかりがサービスではない、そんな持論があります。おもしろさに思わずプッと噴き出したり、心がちょっとだけラクになれるような雰囲気をつくることも立派なサービスなのです。僕がたくさんの人たちとふれあう中で体験した事例もたくさん盛り込みましたので、そうしたサービスのニュアンスを感じ取ってもらえるとうれしいです。

接客の仕事に携わっている方々、会社の経営者、学校の先生、そして営業パーソンなど、あらゆる人たちに手にとっていただけることを願いつつ……。みなさんにクラウンマインドを思う存分、お愉しみいただければ、これ以上の喜びはありません。さあ、お待たせしました。あなたと私のパフォーマンスのはじまりです。



●「第5章 クラウンが大切にする6つの基本テクニック」より

■もぐり込む(逆転)~お客様が優位に立つことによってリラックスした状態をつくる■

クラウンと演劇やジャグラーなどのパフォーマーの大きな違いは何でしょうか。クラウンは、パフォーマンスをするときに、どうやってお客様に合わせ、下にもぐり込むことができるか(逆転)を計算して行動するのに対して、役者は誰をも唸らせるすばらしい演技を披露するにはどうするかを考えている点だと思います。

たとえば、ジャグラーが誰よりも上手にジャグリングをすれば、「すばらしい!」とお客様は拍手をしてくれますが、その角度はお客様から見たら上向きです。お客様がジャグラーを見上げているのです。クラウンも同じように拍手をもらいますが、異なるのは温かく優しい苦笑がついてくること。そんな拍手を受けられればいいと、クラウンは思っています。つまり、すばらしいパフォーマンスを上から見せつけるのではなく、逆にお客様が上の立場に立ち、クラウンを下向きに見ている。にわかに批評家になってもらえればいい。

たとえば、「クラウンK」のときは、パフォーマンス中にさまざまな失敗を繰り返します。するとお客様から「ハッハッハ」と笑われ、「へたくそ」「真面目にやれ!」と言われますが、それでいい。それはお客様が思ったことを遠慮なく言葉にできるような雰囲気をつくることを何よりも大事にしているためです。なぜ、意図的にそんなことをするのでしょうか。それは主役がお客様であるからです。お客様が上からの目線でパフォーマンスを見ているときは、心に余裕を持てるし、ラクな気持ちでいられます。

幼稚園でパフォーマンスをすると、「そんなことしちゃダメだよ!」「忘れ物したよ!」「ちゃんと真面目にやって!」と子どもたちに怒られてばかり。それは意図的に子どもたちより下の位置に、スルリともぐり込んでいるからです。人は自分が優位にいると思うと、思ったことを遠慮なく口にしやすくなります。でも、自分には真似できないすばらしいものを見ているとき、人はそうした言葉は一切口にしません。

試しに、あなたがクラシックバレエやクラシック音楽会を鑑賞しているときの姿をイメージしてみてください。バレエやピアノの音色のすばらしさに心から感動しているとは思います。でも、ちょっと緊張もしていませんか。人はいいものや感動するものを目の当たりにしたときに、言葉を忘れ、呼吸数もだんだんと減ってくると言われているからでしょう。

それに比べてクラウンのパフォーマンスは失敗の連続で隙だらけ。すばらしいという表現では言い表われません。でもその代わり、周りの人たちを大いに笑わせてくれます。見ている人はついつい、「ああしたらうまくいったのに…」「ここがいけないのよ~」と口出しもしたくなりますが、呼吸回数も増えますから身体はリラックスした状態のままです。そうして前のめりになったお客様の下にもぐり込んで、自分の思う要に導く。なんだか柔道に似ていませんか? そう、下にもぐり込み、相手の力を利用して投げることができるのです。

クラウンは、他のパフォーマーがプロに徹すれば徹するほどつくり出すことのできない、別の次元のシチュエーションを計算してつくり出しているのです。それは、クラウンもパントマイム、アクロバット、マジック、バルーン、ジャグリングなどさまざまな技を身につけていますが、技自体を見てもらうことを目的としていないためです。クラウンにとってのパフォーマンスは、あくまで相手との距離を縮めたり、会話をスムーズにするための一つのツールでしかないのです。

このページのトップへ

関連書籍

サービスパーソンのための ディズニーランドのハッピーサイクル研修

サービスパーソンのための ディズニーランドのハッピーサイクル研修

サービスは、楽しくなくちゃ意味がない!

著者:川崎 真衣
 
 

このページのトップへ