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プロが教える決算書を見れば「危ない取引先」は見分けられる

数字の意味をこう読めば、「会社の内情」と「危険シグナル」が見えてくる!

目次

第1章 なぜ決算書の分析が必要なのか
第2章 決算数値の種類にはどのようなものがあるか
第3章 決算書類を入手するには
第4章 有価証券報告書でここまでわかる
第5章 法人税申告書でここまでわかる
第6章 不正や問題点は決算書のここに現われる
第7章 事業計画書で危険な会社を見分ける

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内容説明

■「第1章 なぜ決算書の分析が必要なのか」より


★取引上のリスクと相手先の調査★

■ リスクにはどのようなものがあるか

ひと口に「危ない取引先」といっても、どういうことに対するリスクかによって、その見分ける方法は違ってきます。一般的には売掛債権の貸倒がありますが、リスクはそれだけではありません。

ここでは、どのような相手先に、どういうリスクがあるかを考えます。

■ 得意先は返済能力を調査する

得意先についての最大のリスクは、掛けで売り上げた代金の回収ができなくなることでしょう。また、資金繰りがきびしい会社では、回収が遅れただけでも自社の経営に大きな影響が出る場合もあります。

したがって、得意先については、事前にその返済能力を調査する必要があります。また、会社の財務状況は変化が激しいので、取引開始時だけでなく、定期的に調査をすべきです。

■ 仕入先は安定供給力を調査する

自社の仕入先が倒産しても、貸倒は発生しません。したがって、自社が金銭的損害を受けることはないのでリスクはゼロかというと、そうではありません。

仕入先がつぶれると、販売する商品を仕入れることができなくなってしまいます。もし、その仕入先からの商品が自社のメインの販売商品で、他社から同様の商品を仕入れることができないような場合、自社の経営に重大な影響を及ぼすでしょう。

また、倒産までいかなくても、欠陥品が多かったり納期を守らない仕入先との取引は、自社の信用失墜につながります。

したがって、仕入先についてもやはり、取引を始めるときに、その会社の存続可能性や技術力、商品の調達力などについて調査をすべきです。

■ 出資先は将来性を調査する

取引先は、仕入先や得意先だけではありません。個人として、または会社として他の会社に出資する場合も、出資者としてリスクを負います。

この場合、出資先が倒産すると、出資した金額が無価値になってしまうというリスクがあります。

株式を公開している、あるいは公開を予定している会社へ出資する場合、その値上がり益が期待できます。しかし、市場がその会社を「危ない」「今後の発展が見込めない」と判断すると、時価が下がり、出資した金額を回収できなくなります。もし倒産すれば、無価値になってしまいます。

したがって、出資先の調査の中心は、現時点の財政状態よりは、その会社の将来性が重要になります。

とくに、公開を予定しているベンチャー企業への出資の場合、過去の活動の結果を数値化した決算書よりは、将来の事業計画書やビジネスモデルの検討が重要です。

■ 出資を受ける場合は素性を調査する

自社に出資してもらう場合、こちらにリスクはないと思うかもしれません。
しかし、相手先によっては大きなリスクになる場合があります。

出資してもらうということは、株主になってもらうということです。

株主には商法上、さまざまな権利が与えられています。典型的な権利としては、株主総会に出席して決議に参加することがあります。この権利を利用し、会社に嫌がらせをして利益供与を求めるのが、いわゆる総会屋です。

また、一定割合の株を外部の人間に持たれると、会社を乗っ取られるというリスクもあります。

さらに、株式の公開準備をしている会社では、反社会的勢力が株主にまぎれこむと、公開ができなくなってしまいます。最近では、反社会的勢力ではなくても、いろいろな意味で社会的に評判が悪い会社から出資を受けていると、それを理由に公開が難しくなったりすることもあります。

このように、出資を受ける場合も、いろいろなリスクがあるので、やはり相手先の調査は必要です。

この場合の調査では、相手先の素性や評判といった、数字には現われない部分も重要になります。素性については、株主構成を見ると、ある程度のことがわかります。

■ 債務保証では財政状態・責任感を調査

商売上、または社長同士のつながりで、債務保証を頼まれることがあると思います。

他社や他人の債務を保証すると、その相手先が支払不能になったときに、保証債務の履行を迫られます。また、これが連帯保証の場合は、相手先の支払能力には関係なく、保証債務の履行義務があります。

保証債務は、契約によっては、当初覚悟していた金額以上の履行請求をされ、共倒れをしてしまうケースもあります。このようなリスクを踏まえて、相手先の調査を十分にする必要があるでしょう。

この場合の調査では、相手先の財政状態が重要です。また連帯保証の場合には、相手の誠実さや責任感といった性格が、重要なポイントとなります。

■ 合弁では技術力と財政面を調査する

他の会社と合弁で事業を始めることがあります。たとえば、技術力を持った会社と販売力を持った会社が半分ずつ出資して、おたがいの利点を活かして共同で事業を行なう場合などです。

この場合のリスクとしては、相手先が期待どおりの技術や販売力を持っていないといったことがあります。また、技術力は持っているが、不動産投資の失敗で会社が火の車ということもあります。これでは、合弁によるメリットを十分に活かせません。

したがって、このようなリスクを踏まえ、契約前に相手先の調査を十分に行なうべきです。

決算書で相手先の財政状態を調査するとともに、相手先の技術力などについて、数値面との整合性も見ておく必要があります。



■「第2章 決算数値の種類にはどのようなものがあるか」より


★有価証券報告書で会社のグループ全体の状況がわかる★

■ 上場企業の報告書は誰でも見られる

株式を上場している会社の株は、不特定多数の投資家が買う可能性があります。そこで証券取引法は、投資家の保護のため、上場企業などに事業内や財務内容等を記載した有価証券報告書の提出を義務づけ、誰でも自由に見れるようにしています。

■ 有価証券報告書の提出義務者

次の有価証券の発行者は、事業年度ごとに有価証券報告書を提出しなければなりません

(1)証券取引所に上場されている有価証券
(2)店頭登録されている有価証券
(3)募集または売り出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券
(4)所有者数が500人以上の株券または優先出資証券(ただし、資本金5億円未満の会社を除く)

■ 有価証券報告書の内容

主な経営指標等の推移や会社沿革から始まり、損益計算書や貸借対照表などの財務諸表、品目別の販売実績など、かなり細かい情報まで含まれています(次ページ「目次」参照)。

次のところで入手・閲覧ができます。

(1)書店、図書館
有価証券報告書は、書店や刊行物センターで販売されています。また、大きな図書館に行けば、出版された有価証券報告書を閲覧できます。

(2)財務省関東財務局等
47ページのその他の入手経路に記載した各所で閲覧やコピーができます。

(3)インターネット
一部の会社については、インターネットで有価証券報告書を入手できます
(44ページ参照)。

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★決算公告で資産や損益がわかる★

■ 中小企業の公告は入手しにくい

会社の取締役は、決算書類について株主総会の承認を得たあと、遅滞なく貸借対照表またはその要旨(大会社では、貸借対照表および損益計算書またはその要旨)を公告しなければなりません(商法283条)。

したがって、会社が商法に忠実に決算書類の公告をしていれば、第三者でも、会社の決算書類を見ることができます。

しかし、この公告の定めは株式会社に対するものであり、有限会社では義務づけられていません。また、公告が義務づけられている株式会社でも、中小企業の多くは、この公告をしていません。

したがって、中小零細企業の決算書類をこの公告によって入手することは、実際には難しいでしょう。

■ 決算公告の内容

(1)小会社(資本の額が1億円以下)
小会社では、資産の部を流動資産、固定資産および繰延資産に分ければよく、負債の部も流動と負債引当金に分けて合計額を記載すればよいので、かなり大雑把な内容です。

(2)小会社以外
小会社以外の場合、固定資産を有形固定資産、無形固定資産、投資等に区分するなど、小会社よりは細かい開示が必要になります。
また、大会社では貸借対照表のほかに、損益計算書についても、その要旨を公告しなくてはなりません。

(3)連結決算について
この決算公告は商法上の規制なので、あくまで個別の会社の決算のみの発表となります。
ただ、有価証券報告書では連結財務諸表が中心となっていますので、個別の決算とあわせて、参考として連結決算の公告も行なっている会社が多くなってきています。

■ 決算公告の入手方法

公告の方法は定款で定めなくてはいけませんが、会社により、その公告媒体が違います。

(1)非公開会社
非公開企業でも、日本経済新聞等に公告を掲載している会社はたくさんありますが、そのほとんどは、官報に公告を掲載することとしています。
したがって、調べたい会社が非公開会社の場合は、書店または政府刊行物センターなどで官報を入手しなくてはなりません。

しかし、非公開の会社の場合、商法上で定められた公告をしていない会社が多いので、せっかく官報を入手しても、希望の会社の決算書は入手できないかもしれません。

(2)公開会社
株式公開の審査上、公告の方法は、「時事に関する日刊紙に掲載」としないと、公開審査が通りません。そこで株式を公開している会社の場合、多くは日本経済新聞に公告を掲載することとしています。

決算公告の時期になると、日本経済新聞では決算公告の特集を組んで分厚い冊子が配られます。公開会社の決算公告は、日本経済新聞をとっていれば、だいたい入手できます。

なお、日本経済新聞では、決算データサービスのホームページで、日本経済新聞に決算公告を掲載した企業の財務諸表を無料で検索・閲覧できるサービスを提供しています。
ここでは、公開会社はもちろん、非公開の会社でも、日本経済新聞に掲載された決算公告を見ることができるようになっています。

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